来年のドル円は100円を目指す円安になる

世界経済は、2011年後半から本格的な調整局面に入ると見ている。一方、日本経済は、世界経済が減速する中でも、震災からの復興特需によって、力強い成長を遂げる公算が高い。さらに、2007年6月以降の円高で、円はドルに対してすでに55%も上昇している。日銀は、復興をサポートするため今後も金融緩和を継続する可能性が高い。景気拡大によって、インフレ率は上昇していくと見られる。201 1年後半から2012年末にかけてわが国を取り巻く経済状況は、程度の差こそあれ、80年代後半のバブル経済期に円が大幅に下落した際と酷似することになる。経常収支黒字の縮小、対外直接投資と証券投資の増大、インフレ率の上昇によって円は大幅に下落する公算が高い。来年に向けて、ドル/円相場は、100円超を目指す展開が予想される。

違和感が残る好景気の円安

1985年のプラザ合意以降、ドル/円相場が大幅かつ急激に上昇した局面が2回ある。1回目は1988年から1990年にかけて。 ドルは120円から160円まで約33%も上昇した。次は1995年から1997年にかけてだ。この時ドルは80円から127円まで59%上昇している。1995年4月のG7(先進7力国首脳会議)において行き過ぎたドル安の是正が合意され、ドル買い協調介入が実施されたことに加えて、わが国の金融不安が日本売りを招いたことが主因であり納得のいく円の下落といえる。

 

しかし、前者は世界経済が減速する一方でわが国がバブル経済の真っ只中に生じた、いわば好況期における大幅な円安であったという点において、違和感が残るであろう。世界経済は減速に向かっていると考えられる。すなわち、グローバル・リセッションの到来だ。新興国を代表する中国経済は、インフレの抑制に手をこまねき、景気が腰折れする可能性がある。欧米経済も不動産バブル崩壊の後遺症に苦しむ申、中国という成長エンジンを失えば、景気減速は避けられまい。

インフレと過剰生産が併存する中国

中国のインフレ率上昇に歯止めがかからない。5月のCPI(消費者物価)上昇率は、前年比5.5%上昇し2年10ヵ月ぶりの伸びを示した。さらに国家発展改革員会は、6月のCPT上昇率が5月より「高まる」との見通しを明らかにし、市場では6%台に乗せるとの予想が大半を占める。

 

また、中国人民銀行沖央銀行)が6月16日発表した都市住民へのアンケート調査(5月実施)では、「物価が高すぎる。受け入れがたい」と答えた人の割合が68.2%に達し、今後も物価の上昇が続くと予想した人の割合が45.4%に上っている。

 

一方、人民銀行の李稲葵金融政策委員が、「中国経済は繊維から家電、自動車、建材、家具に至るまで、あらゆる製品が生産過剰だ」と述べているようにインフレ率の上昇にもかかわらず、生産と生産設備が過剰という奇妙な状態が続いている。

 

2008年秋のリーマン・ショック後、中国政府は、4兆元を投じ、インフラ整備や工業製品の増産を推奨してきた。自動車の生産能力は、2015年には4000万台になると予測されているが、2010年に1800万台を超えた新車市場は、2015年の市場規模は3000万台との見方が多い。エアコンの販売台数も昨年3700万
台だったが、主要7社だけi:-2015年に生産能力は2億台と2010年比2倍に拡大する。

 

世界の金融市場

 

中国の工業情報化省は、5月に入り、錬鉄や電解アルミ等の素材業界を中心とした18業種に対し、生産能力の削減を求めているが、政府の削減目標に従い、調整に応じる企業は稀である。

 

人民銀行は、インフレを抑制するために08年の金融危機後、10年10月に利上げを開始して以降、4回の政策金利の引き上げを実施してきた。預金準備率は、2011年に入り6回引き上げられ、大手銀行の準備率は過去最高となっている。さらに、人民銀行は、漸進的な元相場の切り上げも実施してきた。元の対ドル相場は、6.5元割れまで上昇している。

 

インフレと過剰生産が併存するのは、中国のインフレが構造的な産物であることを物語っている。つまり農産物や資源価格の高騰などに由来した金融引き締め策だけではもはや対処できないわけだ。

 

今後も人民銀行は引き締め政策を継続すると考えられるが、景気にはすでに減速の兆候が出てきている。したがって、金利と元相場の上昇が早晩、需要と生産を必要以上に抑制することになる。その結果、生産能力の過剰が一気に顕在化し、設備投資と調整が同時に迫られるというハード・ランディングを迎える可能性が高い。